はじめに:よくあるご相談「塗装しても溶接の跡が見えるのはなぜ?」
金属製品の美観を左右する大きな要素が、”「溶接まわりの仕上げ」”です。
お客様からご相談の中に、「塗装をすれば、溶接の跡(ヒズミやビード痕)は綺麗に消えるんですよね?」というものがあります。
実はここには、板金加工と塗装の「相性」に関わる重要なポイントがあります。
今日は年内最後のブログとして、溶接痕と塗装の関係について整理してみたいと思います。
1. 塗装は「表面の形」をそのまま写し出す
まず大前提として知っておいていただきたいのは、”塗装は「表面の形を変える工程ではない」”ということです。
塗料の膜厚は、私たちが想像する以上に繊細です。
そのため、下地にある以下のような状態は、塗装後にそのまま表面に浮き出てしまう場合があります。
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溶接によるわずかな凸凹
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サンダーでの研磨跡
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コンマ数ミリの段差
「うっすらとした溶接のライン」が見えるのは、塗装が悪いのではなく、下地の表情を塗装が正直に伝えているからなのです。
2. 「どうしても隠したい」場合の解決策:パテ処理
製品の用途(意匠性の高い筐体など)によっては、溶接痕を消してフラットに見せたいというケースもあります。
その場合は、”「パテ処理(下地調整)」”という工程を追加します。
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メリット: 段差がなだらかになり、高級感のあるフラットな仕上がりになる。
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注意点: 工程が増えるためコストや納期が変動する。また、仕様(耐熱性や強度)によっては向かない場合もある。
ティー・エム製作所では、無理に高コストな仕様を勧めることはありません。
「用途・コスト・見た目」のバランスを考え、最適な方法を一度ご相談させていただく形をとっています。
3. 「誰が悪い」ではなく「工程の相性」を考える
溶接、仕上げ、塗装。これらは本来、役割が異なる工程です。
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溶接: 強度と歪みをコントロールする
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仕上げ: 表面の均一性を整える
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塗装: 防錆・保護・意匠を完成させる
どこか一つの工程だけで解決しようとすると、無理が生じます。
弊社の強みは、溶接の状態から塗装後の表情までを社内で共有していることです。
「この製品なら、溶接の段階でこうしておこう」という逆算ができるため、安定した品質を維持できるのです。
4. まとめ:きれいな塗装は、丁寧な下地づくりから
溶接痕は決して「悪いもの」ではありません。製品の強度を支える大切な証でもあります。
大切なのは、”「どこまで見せて、どこまで隠すのか」”という着地点を、設計段階で共有しておくことです。
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そのままの質感を活かすのか
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パテで完璧に整えるのか
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仕上げの番手を変えて調整するのか
迷ったときは、ぜひ板金と塗装の両方を知る私たちにご相談ください。
■ 年末のご挨拶とお問い合わせ
今年も一年、株式会社ティー・エム製作所をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
現場目線の情報をお届けしてきたこのブログも、多くの方にお読みいただき感謝しております。
来年も、皆様のものづくりを支えるパートナーとして、より一層精進してまいります。
板金加工や塗装に関するご相談、試作のご依頼、工場見学などは、新年も変わらずお気軽にお問い合わせください!
株式会社ティー・エム製作所
〈本社・精密板金工場〉
東京都武蔵村山市伊奈平2-40-2
〈塗装工場〉
東京都西多摩郡瑞穂町大字二本木380-14
来年もどうぞよろしくお願いいたします。それでは、良いお年をお迎えください!